デスノックは本当に効果があるのか
今年の阪神キャンプにおいて、いわゆる名物企画として
若手選手に対する通称「デスノック」(死のノックの意)が
連日行われているのだが、ついに負傷者が出てしまった。
試合後にメイン球場で地獄のデスノックを受けていた阪神・井上が、途中で離脱した。
懸命に白球を追っていたが、飛び込んだ際に左膝を打ち付け、トレーナーに付き添われながらロッカーに下がった。
この日は五回の守備から途中出場し、2打数無安打に終わっていた。
デイリー
いわゆる昔の「千本ノック」みたいなものだが
若手を鍛え上げ、一日も早く一人前の選手に育て上げたいと思う首脳陣の気持ちは分からないでもない。
理論派で知られるジャイアンツの桑田コーチでさえも
投げすぎはダメと提唱しつつも、それは体が成長段階の学生に対しての意見であって
体が出来上がっているプロ野球選手に対してではない。
いくら野球が職業と言いつつも、身体を酷使する選手たちは大変なのだが
果たしてそこまでやる必要性があるのだろうか。
守備におけるアジリティー
井上広大選手は外野手である。もちろん外野手でも打球に対する俊敏性は必要だし
デスノックは守備力向上というよりはノックを通じて足腰の強化も目的としているだろうから、打撃にも十分活かせることとは思う。
しかし、打球に対する反応というのは
最初に反応があり、次に素早い移動➡減速➡切り返し➡ステップ➡送球と
段階を経て行われるものである。
アジリティーとはもともと機敏さや素早さといった意味で
ビジネス用語としては近年目まぐるしく変化する環境に対し
欠かせないワードとなった。
企業経営において意思決定のスピードや効率など
不確実性が高く、不透明な時代を組織と個人が
生き抜いていくためのキーワードとして注目されている。
スポーツにおけるアジリティーは速さにおける定義を
3つに分けて「SAQ」と呼ばれる概念があり、
「S」は単純にスピードの速さであり
「Q」はクイックネスで完全静止状態からの反応の速さ
「A」がアジリティーで機敏性、急な減速や方向転換を伴う加速を正確に
行えるかどうかの能力のことを指します。
外野手にはアメリカンノックがいいのでは
この井上選手に対するデスノックは、いったい何を目的に行われていたのでしょうか。
下半身強化ならランニングでもいいでしょうし、
外野手のノックならアメリカンノックの方が効果があるように思えます。
井上選手が今後、内野手として起用するプランがあるのであれば
内野手としての動きとして、デスノックで徹底的に体に覚えさせばいいと思うのですが
木浪選手や小幡選手ら内野手が受けるノックと外野手である井上選手を同じカテゴリーで一括りにしてしまうのは、普段内野守備練習をしていないであろう井上広大選手にとっては気の毒に感じました。
もちろん、阪神首脳陣もキャンプを全体で盛り上げ、声を出し元気に野球をやるという
スローガンで取り組んでいるでしょうから、批判をするつもりはありませんが
無駄に故障個所を作ってしまい、肝心の打撃に影響が出てしまっては
元も子もなくなるので、そのあたりのジャッジは難しいところですね。
まとめ
ビジネスにおいても昭和の時代は長時間労働当たり前、残業当たり前の時代から
労働環境を整える時代の流れが押し寄せました。
もちろん野球界でも同じことでしょう。
現代の科学的、デジタル的、データを活かした野球と、昔の根性野球。
もちろん、質と量、どちらも大事です。
その二つをバランスよく鍛え上げたチームがおそらく優勝するのでしょう。
とにかく井上選手、大事に至らなくて良かったです。
デスノックでケガ人増えたというのだけはご勘弁を。